カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「先ほどのお話ですが」
服部くんが部屋を出た後、月城さんに話しを切り出す。
「モデルの話か」
頷くと月城さんがコーヒーカップを持って立ち上がったのでそれを受け取る。
「コーヒーでしたら私が。それと」
空腹ではいけないと月城さんが会議に出ている間に急いで買ってきたサンドウィッチを差し出す。
「ありがとう。いただくよ」
サンドウィッチに手を伸ばした月城さんを見てからコーヒーを淹れ、目の前に置いた。
「座ったら?」
月城さんに言われて、斜め向かいに腰掛ける。
「そんなに見られていたら食べにくい」
言われて視線を外す。
「すみません」
「いや、そうじゃないな。モデルを引き受けるか断るか、その話をしたいんだよな?」
小さく頷くと月城さんはサンドウィッチをコーヒーで流し込んでから答えをくれた。
「俺は引き受ける。きみと恋人になれるのなら役でもなんでも嬉しいから」
「どうして」
私にこだわる理由があまりに理解できないことだったので聞けば月城さんは小さく笑ってから答えてくれた。
「俺は男に守られるのが当たり前、男に奢られるのが当たり前、仕事も言われたことをすればいい。そういう女性より反対の女性を好むんだ。その上で謝礼を受け取らないと言ったきみはインパクト抜群だった」
それは私だけではないのでは、と首を傾げると月城さんは丁寧に言葉を重ねてくれた。
「はじめは『恋愛を成就させられるカメラ女子』に対する興味だけだった。その次は秘書としてどのくらい優秀かを見極めるだけ。つまり社にとって、そして俺にとってどのくらいきみが有益か、それを知りたかった」
頷くと月城さんも同じように頷き、続ける。
「ただ関わるうちに俺はきみの魅力に気づいた。服部が言っていたように、本当のきみはとても美しい。今まで埋もれていたようだが、笑顔は可愛いし、仕事はできるし、センスのある趣味を持っているし、受け答えも面白い」
月城さんはそう言うと私の頬あたりに視線を下げた。
「すぐに赤く染まる頬には触れたくなるし唇を重ねたくもなる」
触れられているわけでもないのに、頬と唇が熱くなる。
熱を冷やすように手で頬を扇ぐと月城さんが立ち上がり、隣に腰掛けた。