カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「見てみろ。緑が本当に綺麗だ」
指差された方向の樹々に目を向ける。
余裕なくて視界に入っていなかった鮮やかな緑色に気持ちが少しだけ和らぐ。
所々で差し込む光もキラキラしていてとても綺麗。
「晴れてよかったですね」
月城さんを見上げると、月城さんは私を見下ろし、微笑んだ。
「二人とも深呼吸してみてください。緑のいい匂いがしますよ」
服部くんに言われて立ち止まり、ゆっくり深呼吸すると緑の匂いが鼻腔をついた。
「いい香り。癒される」
「ほんとだな」
月城さんの優しい声がさらに癒しをくれる。
そっと手を握ると月城さんは指を絡めた。
「いいね、恋人繋ぎ。もしかしてお二人は本当に付き合ってるとか?」
服部くんが茶化すように言う。
「そ、そんなわけないでしょ!」
否定すると服部くんが笑った。
「無気になっちゃって。怪しいなー。でもそれならその方が助かる。もう少し突っ込んだお願いが出来るから」
「なにそれ」
聞くと服部くんはカメラから視線を外し、ニヤリと笑った。
「あとでのお楽しみ」
「なにそれ!?」
もう一度聞いてみるも服部くんは答えてくれない。
カメラの設定を変えながら今度は私たちの背後に回った。