カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「次は後ろから撮るのでそのまま真っ直ぐ歩いてください」
後ろからなら表情を気にしなくていいから歩きやすい。
ただ服部くんがなにを考えているのか。
この後、どんな撮影をするのか。
気になって仕方ない。
「次は?」
聞くと服部くんは大きな鞄から花束を取り出した。
「これを二人で持って顔を隠して」
「どういうこと?」
聞くと向かい合って、花束で口元を隠してと言う。
「キスをしているように見せたいのか」
「月城さんは理解が早くて助かります!」
服部くんが親指を立てた。
「ちょ、ちょっと待って!そんなの」
恥ずかしくて出来ないと言おうとした。
でも恋人同士の写真では定番のシーン。
「本当にしてもらってもいいよ〜」
服部くんは冗談めかしてウインクまでして言うけど、こちらはどうしたって楽しめない。
「眉間」
向かい合った私の顔を見て月城さんは笑い、眉間を指で突いてきた。
「仮にも恋人にその顔はないだろ」
「どういう顔が正解か、分からないんです。経験がないから」
隠したって仕方ないと事実を伝えると月城さんは驚いたように目を見開いた。
「本当にないのか?一度も?」
「嘘をついているように見えますか?」
質問に質問で返すと月城さんは眉間に皺を寄せて首を捻った。