カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「鬼はまず月城さん。捕まえる時は後ろから抱きしめてくださいね。ではいきますよ。はい、加藤逃げてー。1.2.3〜…」
不思議なもので鬼ごっこと言われ、カウントされると体が勝手に反応するものだ。
ダーッと逃げるようにして走る。
「意外と速いな」
月城さんはそう呟くと一気に加速してあっという間に私を背後から抱きしめた。
「つかまえた!」
「速い。あはは。つかまっちゃった」
バックハグされているのに、鬼ごっこという状況が楽しくて恥ずかしさはあまりない。
服部くんの計画通りだとしたらさすがだ。
「じゃあ今度は私が鬼ですね。いきますよー!1.2.3〜…」
撮影ということはひとまずおいて、童心に還った気分で数えると月城さんが走り出した。
「速っ」
たった10秒でめちゃくちゃ遠くの方にいる月城さんを見てやる気がみなぎってきた。
「よーし!」
ワンピースの裾を気にせず、猛ダッシュ。
すると月城さんも私に向かって走ってきた。
「え?!」
と思った瞬間、出会い頭にフワッと体が浮いた。
抱き上げられたのだと気づいた時には驚きで顔が固まる。
「ていうか、なにしてるんですかっ!これじゃあ鬼ごっこにならないじゃないですかっ!」
「いや、俺のところに一直線に走ってくる姿があまり可愛くてつい」
月城さんは私を地面に下ろすと、身を屈めておでこをくっつけた。
「うん、可愛い」
「これはなんか無性に恥ずかしいのでやめてください」
「わかった。じゃあもう一回」
月城さんは私から離れて走った。
楽しそうな月城さんに、ドキドキするのに私まで楽しくなってきて、気持ちが高揚する。