カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「行きますよー!」
また月城さんに向かって全速力で走り、後ろからガバッと飛びつく。
「つかまえた!」
「ハハ。ほんと、速いな」
そう言うと月城さんはクルリと振り返り、私を前側から抱きしめた。
「しかし…疲れたな。久しぶりにこんなに走ったよ」
「私もです」
月城さんに寄りかかるように背に手を回す。
「汗かいたな」
「そうですね…あ!臭いとか」
急に汗の臭いが気になって離れようと試みる。
でも月城さんは抱きしめる手を緩めない。
「きみからは甘いいい香りがする」
言われて私も月城さんの胸元に鼻を寄せる。
「月城さんもいい匂い。この香り」
月城さんの方を見上げてから。
「柔軟剤だ」
「柔軟剤ですね」
同時になったことがおかしくてお互いに吹き出した。
「次はなにをして遊びますか?」
子供が遊びをせがむように月城さんに言うと服部くんの笑い声が起きた。
「加藤。遊びに来てるんじゃないから。とりあえず一旦、休憩しよう。汗拭かないと風邪ひいたら大変だ」
服部くんの声が聞こえて撮影だということを思い出した。
純粋に楽しんでいたことに驚きを隠せない。
ウェットシートで体を拭き、飲み物を口にして身も心も落ち着かせる。
その間、服部くんはレジャーシートを敷き、その上にお弁当を置いてくれていた。
「次は?」
「ランチの風景。ちょうどいい時間だし」
時計を見ると13時になろうとしていた。
そういえばお腹が空いた。