カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「あ、加藤はこっち」
服部くんに隣に座るよう指定され、移動すると次の指示が出た。
「それ。ただ食べるんじゃなくて、お互いに食べさせ合ってください」
「…そう来ると思った」
ここは予想通りだったので呟くように言えば服部くんは満足そうに微笑み、カメラを構えた。
「えっと…なにが食べたいですか?」
月城さんに聞くと「卵焼き」と答えてくれた。
素直な返事と卵焼きという単語がなぜだか可愛く思えて、フッと笑ってしまう。
「なんだ?」
「いえ。卵焼きですね。はい。あーん」
照れることを捨てて言えば、月城さんは素直に口を開けてくれた。
「美味しいですか?」
服部くんの声に月城さんは頷く。
「美味いよ。自慢の彼女だな」
「へへ」
照れた様子の服部くんが可愛い。
服部くんを見てニヤッと微笑むと話しを振られた。
「加藤は?料理出来るんだっけ?」
「出来なくはないけど自慢できるほど上手くはないよ」
「ですって」
服部くんが今度は月城さんに振った。
「じゃあ今度作ってきてもらおうか。お手並み拝見で」
「いや〜…それは無理かもです」
舌の肥えていそうな月城さんに食べさせるお弁当なんて作れる気がしない。
「ま、いずれ作ってもらうようになるだろうから、その日を楽しみにしているよ。それよりきみはなにを食べたい?」
月城さんの言わんとしていることが理解出来なかったけど、聞かれたのでお弁当に目を向ける。
色鮮やかなおかずの品々に目移りしてしまう。
でもなるべく食べやすいものがいい。
「私も卵焼きで」
言うと月城さんは箸で卵焼きを取り、口元に差し出してくれた。
「はい、あーん」
同じように言って、言われて。
互いに妙に照れてしまう。