カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「加藤さんって気の多い人なのね」
あまりにも身に覚えのない言葉にピンと来なさ過ぎて戦闘モードが消える。
「恋人いない歴=実年齢なのに?」
質問するように現実を突き付けると神崎さんの眉間にさらに深い縦皺が寄った。
「そんなはずないでしょう?」
信じていないようだ。
「どうしてそう思うんですか?」
「だって男受けする写真を撮るのが上手だから恋愛経験豊富なんだって話を聞いたから……」
誰かのためになるのなら、と進んで撮影していたマッチングアプリのプロフ撮影。
それが結果的に男受けする写真と思われていたなんてショックを隠せない。
黙り俯くと神崎さんが焦ったように言葉を重ねてきた。
「みんなが言ってることだからね。私が言ってるんじゃないわよ。月城さんにこのこと言わないでね。月城さんには食事に行きたいってそれだけ言って。とにかく月城さんとのこと、考えてちょうだいね」
「ですからそれは無理だと」
言っているのに神崎さんは言うだけ言ってその場をあとにした。
「みんなって誰よ」
どうせ1人、2人が口にしていることを「みんな」と言っているのだろうけど、「男受けする写真」というのは堪えた。
「はぁ……」
今日何度目かのため息を吐き、給湯室から出て月城さんのいる部屋へと向かう。