カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
月城さんの車で海岸線を走る。
梅雨明けが発表されたので晴天に恵まれた。
窓から外を見ると海に太陽の光が反射してキラキラ光って見えた。
ジッと外を見ていると運転席から声がかかる。
「写真撮りたいなって思ってる?」
「そうですね」
ここ最近は撮影依頼が途絶えていたから風景に目を向けることが多くなっていた。
海の写真はまだ撮っていなかったから気にはなる。
ただ少し写真を撮ることが怖くなっていた。
正確に言えば撮った写真を誰かに見せてそれを評価されるのが怖かった。
「服部へのプレゼント買ったら写真、撮ろうか。カメラ持って来たよな?」
手元の荷物に目を向ける。
月城さんに持参するよう言われたのだ。
『男ウケする写真』と言われてから触るのも躊躇していたのだけど。
「俺を撮ってほしいんだ」
「距離を縮めるために?」
前に言われたことを覚えていたのでそのまま言葉にすると月城さんは笑って首を横に振った。
「距離はだいぶ近づいただろ?そうじゃなくて、服部の写真見て、きみならどんな風に撮るのか、どんな表情を撮ってくれるのか、気になったんだ。俺はきみが撮る写真、すごく好きだから」
自信をなくしていた分、月城さんの温かい言葉が身に沁みる。
「武地たちも喜んでいたよ。お宮参りの写真を撮ってほしいとも」
「無事に産まれたんですか?」
聞くと月城さんは頷いた。
「元気な男の子。母子共に健康だそうだ」
「それは良かったです」
幸せな報告に胸がほっこりする。