カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「やっと笑ったな」
月城さんに言われてハッとする。
「すみません」
謝るも月城さんは気にするなと言わんばかりに微笑んだ。
「あの、お宮参りの撮影の話ですが」
「うん」
月城さんの優しい相槌に断るのが申し訳なくなる。
でも今の私では素敵な写真は撮れない。
「断っていただけませんか?」
「わかった」
「すみません」
謝ると今度は月城さんがこちらを見た。
「謝らなくていい。プロじゃないんだ。撮りたくない時だってあるさ。ただ今日は俺を撮って。それから俺にも撮らせてほしい」
「え?景色…まさか私を撮るんですか?」
思わぬ提案に聞き返すと月城さんは笑顔で頷いた。
「俺は上手く撮れないが、下手な写真っていうのも見て面白いぞ」
「それは私を笑わすため、ですか?」
ずっと思いつめていた顔をしていたから心配をかけて気まで使わせてしまったのだろう。
「すみません」
「こら」
月城さんの少し強めの口調が車内に響いた。
「何度も謝るな。きみは悪いことなど何もしていないだろう」
「そうかもしれませんが」
「俺が撮りたいのは撮られるばかりというのも面白くないからだ」
きっと本音は違うのだろうけど、私に気を使わせまいと言ってくれた月城さんの言葉をそのまま受け取る。
「私、表情は作れませんよ?」
「ありのままを写すから気にしなくていい。それよりまずはここだな」
月城さんはそれから車を駐車場に停め、降りた。
後に続いて店内に入るとカバンがズラッと並んでいた。