カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

熟練された工房職人によるハンドメイドのカメラバッグブランド店。

「素敵」

フォトグラファーになる服部くんにこれ以上ない贈り物だ。
色々と手に取り肌触りや重さを確認していく。

「イタリアンレザーは使い込むほど独特の風合いに変化し生地がやわらかくなるんだ」

月城さんの知識を織り混ぜながら服部くんの姿を想像して最適な鞄を探していく。

「これは?」

月城さんが手に取ったのは黒。
大人で落ち着いたイメージのある月城さんにはすごく似合うけど、明るくて元気な服部くんのイメージとは少し違う気がする。

「あ、これいいかも」

チョコと書かれた革色の鞄を手に取る。

「高校の時に持っていた鞄の色に似ている」
「よく覚えているんだな」
「服部くんは私の憧れでしたから」

写真に衝撃を受けて、勇気を出して声を掛けた。
撮影すると聞けば時間が許す限り付いて回っていた日が懐かしい。

「服部は人気者だった?」
「はい」

男女問わず人気があって、気を使う割に、相手には気を使わせない。
分け隔てなく接してくれるステキな人。

「服部を好きになったことは?」
「え?」

聞かれて月城さんを見上げるとバツが悪そうな顔をした。

「悪い。今の質問はナシだ。嫉妬とか…さすがに引くよな」

口元を手で覆う月城さんを見て、可愛いと思った。

「笑うなよ」
「へへ。すみません。でも嫉妬されるのも嬉しいです」

無神経だったと反省はするけど、初めて誰かに嫉妬されて、こそばゆいのに幸せだった。

「これにしようか」

月城さんは話題を変えるように私の手から鞄を取った。

「半分払います」
「気にしなくていい」

と言われても、私からも贈り物をしたい。

「カメラストラップだ」

お会計横に置いてあって、こちらもレザーの商品だった。
鞄と同じ色もある。

「では私はこれを贈ることにします」

月城さんに言うとニコッと微笑んでくれた。

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