カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「こっちが海岸に続く道みたいだな」

お店を出てから看板を見つけた月城さんについて行くと手が差し伸べられた。
レストランのオープン記念の時には取れなかった手。
今日はデートなのだと鼓舞してその手を取って並んで歩く。

「結構人がいますね」

海辺にはサーファーや海水浴の人で溢れていた。
これでは撮影するにしても難しい。
海は諦めて展望台の方へと向かうがここも観光客でごった返していた。

「撮るなってことなのかな」

運命がそう導いているような気がしてならない。
でも私の写真を好きだと言ってくれた月城さんの気持ちに応えたい。
リュックからカメラを取り出し、隣りを歩く月城さんに向けてシャッターを切る。
それから恐る恐る撮影した画像をチェックしてショックを受けた。

構図や設定は悪くないし、月城さんはカッコよくて素敵なのに、水平ではないし、アングルも悪くて気持ち悪い。
月城さんがカッコ良すぎるのも不自然な気がして、こんな写真だから男受け、とかそんな風に言われてしまうのだと思ったら、あまりにもひどい写真を前にカメラから手が離れてしまった。

「撮らないのか?」
「あれ、食べたくないですか?」

目に入ったソフトクリームのお店。
無理矢理話の矛先を変えて月城さんは少し怪訝そうにしているけど、暑いしおかしな話ではないと見て見ぬふりをしてお店の方に寄っていく。

「たくさんメニューがありますよ。月城さん、甘いものはお好きですか?」

…って、聞くまでもなかった。
月城さんはすでにメニューに目を向けていたのだ。
クールな見た目と違って甘いものに目のない大人な男性に可愛らしさを感じ口元が緩む。
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