カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「もしかして月城和津さんじゃないですか?」
「そうだが」
月城さんが答えると男の子の顔がぱあっと明るくなった。
「俺!会社説明会行ったんです!月城さんのお話しに感銘を受けて、今、ニ次まで通っています!」
「そうか。受かったら春からよろしく。彼女も秘書課にいるからお見知り置きを」
月城さんに言われて会釈すると女の子たちが声をあげた。
「社内恋愛とか最高じゃない?!」
「マジで羨ましい」
女の子たちの好奇な目に晒されて恥ずかしくて隠れたくなる。
でも隠れるようなことは月城さんの隣に立たせてもらっているのに失礼だと営業的な笑みを浮かべていると、四人分のソフトクリームを購入し終えた月城さんが笑った。
「そんなに身構えなくても大丈夫だ。きみはそのままで十分可愛いんだから」
「でも」
「そうだな。恋人だって彼には知られちゃったな」
思っていることとは少し違うことを月城さんは言ったけど、現実その問題もある。
もしあの男の子が受かり、入社してきたら私と月城さんの関係を恋人だと同期や先輩に言うだろうから。
「もう覚悟決めようかな」
頭で考えるより言葉が先に出た。
それに対して月城さんが反応する。
「本当に?」
「本当に」
でも月城さんの表情は微妙だ。
「焦らなくていいから」
「焦っているわけでは」
ないのだけど、半ば開き直って出した答えのような気もして完全に否定はできなかった。
「すみません」
「気にするな。それより楽しもう」
月城さんの眩しく弾けるような笑顔が鬱々とした気持ちを少し払拭してくれた。