カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
実際、経済的な問題はとても大きい。
大学の時に借りた奨学金を返さなければならないし、一人暮らしをしているから安定した生活費が必要だ。
母がひとりで苦労して育ててくれたという家庭環境もあってお金はいくらあっても困ることはないと身を持って体感している。
今の仕事は給料が良いし、仕事にも慣れてきて趣味の時間も確保出来ている。
「写真を噂のネタにされたのはすごく嫌だし、苛立ちますし、悲しかったですけど、今の安定した生活を手放す勇気は私にはありません」
正直に話した。
にも関わらず月城さんは私の本心を探るようにジッと私の目を覗き込む。
「信じてもらえませんか?」
耐えられずに聞くと月城さんは首を横に振った。
「信じるよ。でも俺は我慢がならないんだ。ただの嫉妬心だけじゃない。きみからカメラを奪おうとしている。そんな悪意に満ちた噂を流したことが許せない。きみのことを悪く言ったヤツらを片っ端から見つけて解雇したいくらいに」
そこまで言うと月城さんは屈めていた体を起こしながら小さな声で呟いた。
「俺も奏音の件で、きみのことを利用したから同類なんだが」
「全然違いますよ」
と言うよりも私を利用し、恋人が出来た人たちは一様に喜んでくれていた。