カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「幸せを妬む、その妬みの矛先が私にきているだけの話なのかもしれません」
「そう納得してやり過ごすのか?そんなことをしてこれからカメラを構える時、純粋に楽しめるのか?」
月城さんに問い詰められて困惑してしまう。
だってこれは私個人の問題で、言われる筋合いはないから。
「ごめん」
月城さんは私の様子を見て謝った。
「完全に俺の独りよがりだよな」
「あ…いえ。お気持ちはすごく嬉しいです」
「それなら」
月城さんは少し言い淀み、それから切実な顔と声で言った。
「せめて前みたいに楽しそうに撮影してくれ」
「え?」
「今日、ほとんど撮っていないだろ?」
月城さんはすぐにカメラから手を離してしまっていたのに気づいていたのだ。
「このままだとカメラが持てなくなるぞ?」
そう言うと月城さんは歩きながら自身の話しを始めた。
「俺もカメラが好きだった。電車が好きで電車を撮りたくて始めたんだ」
でも鉄道オタクという概念が周囲の人間からすると意外で、月城さんのイメージと違っていたため、受け入れてもらえなかったという。