カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「そういえば咲の写真撮ってないな」
帰りの車中で月城さんが思い出したように言った。
「気付きました?」
撮られ慣れていない私はカメラをあえて手渡さなかった。
「また今度撮ってください」
「そうだな、また今度。でもせっかく想いが通じたから」
月城さんは私のアパートの前に車を停めるとシートベルトを外した。
「目を閉じて」
「え?あ、はい!」
月城さんの方を向いてしっかりと閉じれば唇がそっと重なった。
「照れます」
顔が熱い。
「ハハ、そうだな」
月城さんもはにかんだように笑っている。
その笑顔が可愛くて胸がキュウっと締め付けられた。
「好きになった人が月城さんでよかったです」
言葉にすると今度は困ったような顔をする。
「月城さんって時々すごく可愛いですよね」
「そんなこと言うとこのまま連れて帰るぞ」
上目遣いで睨む月城さんもまたステキで、心臓が忙しい。
でも今日はこれが精一杯。
考えなければならないこともたくさんある。
「すみません。今日は帰ります」
そう言うと月城さんはもう一度キスをした。