カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
転職
気持ちが通じ合っても照れくさいのは顔を合わせた朝だけ。
相変わらず月城さんは忙しいし、公私混同はしない。
正確には忙しくてそんな暇すらない。
それでも月城さんに会うことは出来るし、姿を見て言葉を交わすこともできる。
フォトグラファーになると決めて動き始めた今、月城さんの存在がありがたかった。
好きな人がそばにいてくれるだけで頑張ろうって思えるのだから。
でもこれからは顔を合わせる頻度が減ってしまう。
そう思うと切なさが胸を掠める。
「でもよかったじゃん」
月城さんとの交際が始まったこと、フォトグラファーへの道に進むことを伝えたのは服部くんだ。
服部くんは少し驚いた顔をしたけどすぐに理解を示してくれた。
「転職ってなると大変だろうけど、夢を追うのはいいと思うよ。ただ月城さんとのことは進展が遅かったな」
首を傾げると服部くんの撮影の日に恋人関係になると予想していたと教えてくれた。
「これだってさ」
服部くんは渡したプレゼントの包みに触れながら意地悪く言う。
「なかなか進展しないから口実に使われただけだろ?」
「違うよ!プレゼント探しに行くのがメインで結果的にデートになっちゃっただけだよ」
わざとだと分かっているのにムキになってしまうのは恋話に慣れていないから。
「分かってるって。ごめん、揶揄って」
服部くんが謝った。
「ううん。私もごめん」
「いや。でもさ、正直、月城さんと付き合うってどうなの?あの人、独占欲強そうだよな。今日だって俺と加藤が二人になるのが気にかかるからって知り合いのお店を指定してきただろ?」
服部くんはオーナーの方をチラッと見た。
私も同じように視線を向けるとオーナーの武地さんと目が合い、ニコリと微笑まれたので会釈で応える。