カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「いいんじゃないか?」

月城さんはフォトスタジオのホームページと募集要項を見終えた後、スマートフォンを服部くんに返しながら言う。

「歴史があるスタジオなのにそこに固執せず、新しいことにチャレンジしているのもいい」
「たしかに。スタジオ撮影以外にも出張撮影も始めたって聞いたよ」

服部くんは情報を付け足してから月城さんに問いかけた。

「でも月城さんはそれでいいんですか?」
「なにが?」
「加藤が辞めちゃって、困るのは月城さんじゃないんですか?」
「あぁ…それはそうだな」

月城さんはちょうど運ばれてきたビールに手を伸ばし、ひと口含んでから私の方を見た。

「優秀だから辞められたら困るよ。でも夢を応援してあげたいから」

優しい眼差しに胸がトクンと高鳴る。

「もっとも俺が応援できることなんてたかが知れてる。本当は金銭面で多少なりともバックアップしたいところだが本人がそれを望まないし」

月城さんは困ったように笑い、こちらを見る。

「頑固で困るよ」
「その割に嬉しそうですけど」

服部くんの声に、前を向くと服部くんは呆れたような笑みを浮かべて私と月城さんを交互に見た。

「自慢の彼女っすね」

いつか聞いた台詞に月城さんが笑った。

「羨ましいだろ」

その月城さんの言葉に服部くんは肩をすくめてみせた。

「ていうか今日は俺のお祝いをしてくれるんですよね?見せつけられるのは勘弁ですー」
「ごめん!そんなつもりは」

焦って否定するも、服部くんの笑顔に一蹴されてしまった。

「加藤、冗談だから。でも本当によかったな。いい人と巡り逢えて」
「え?あ…うん!ありがとう」

服部くんの撮影がなければ距離は縮まらなかっただろう。
お礼を言うと服部くんは満足そうに微笑んでくれた。
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