37℃のグラビティ
無常にも。


そんなアタシに、タイムリミットを告げたのは……


着信した新海のスマホ。


その音に弾かれた様に、どちらからともなく離した唇。


新海はポケットからスマホを取り出すと……


アタシから少し離れて、画面を指でスライドさせた。


「もしもし?」と発した後は……「あぁ」とか「うん」とか、相槌ばかり。


聞き耳を立てちゃいけないって思いながら、全神経が耳に集中する。


「わかった。じゃあ明日」


そんな新海のセリフと、柔らかな声のトーンに、心がギュッと締め付けられる。


相手はきっと、女の子。


そんなの最初から、わかってたことなのに……


まだ唇に強く残る新海の存在が、余計アタシを切なくした。


一瞬の夢の様な出来事は、まるで線香花火みたいに呆気なく……


アタシの心に、綺麗な閃光だけを刻む。


そんな夏の終わり――
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