37℃のグラビティ
教室に入ると、なんだか懐かしく思えるざわめき。


久しぶりに会うクラスメートと、笑顔で挨拶を交わして、自分の席についた。


いつの間にか日課になった、新海の席を目で追う癖。


もちろん「遅刻常習犯アーヤ」が、いるわけもない。


「そうそう昨日、アーヤ見たよ」


女子のひとりが言い出して、恒例のごとく始まったアーヤ話。


アタシはといえば……


蚊帳の外で聞いていないふりをしながら、しっかり立てている聞き耳。


「それがさぁ、倉田美紀(くらたみき)と一緒だったんだよー!」


「まじ!? とうとうアーヤも、クラミーの罠に!?」


アタシはポーカーフェイスを装いながら、見えないところで、思いっきり動揺していた。


「クラミー」っていうのは、倉田美紀の影で呼ばれているニックネームだったりする。


学年ナンバーワンと噂される可愛さを持った女子で。


男がすぐにクラクラきちゃうところと、名前である倉田の倉をかけ、名前の美紀の美をとってクラミー。
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