37℃のグラビティ
注文したピザが届くまで、新海の淹れてくれたコーヒーを飲みながらする他愛ない話の途ぎれた合い間に訊いた。


「新海くんの家、今日も両親不在なの?」


「今日に限らず。仕事、随分忙しらしいし?」


手にした雑誌をめくりながら、興味なさそうな口調。


何かある様な気がしたけれど、触れて欲しくなさそうな新海に気付いて、アタシは口を(つぐ)んだ。


「陽織ってさ、ホント何も訊かねぇし、何も言わねぇのな?」


呆れると言うより、関心した様な声のトーン。


アタシの心を見透かしてる様な新海の呟きに、思わずフリーズする。


「そんなこと言って……何か訊かれたり、言われたりしたら、困るくせに」


精一杯わざとおどけて、意地悪の仕返しをした。


「確かに」


新海はあっさり肯定して、何が可笑しいのか、薄く笑っている。


本当は……


アタシだって、言いたい事や訊きたい事は、山ほどある。


だけど新海が困るから……ううん、違う。


それを言うのも、訊くのも……アタシが怖いだけなんだ。
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