37℃のグラビティ
そんな中、突然鳴ったインターホン。


弾かれた様に、新海はモニターを覗き込むと、オートロックの解除ボタンを押した。


宅配ピザが届いたのだとわかり、財布を取り出そうとするアタシを新海が止める。


玄関へと出て行く新海の背中をリビングで見送りながら、アタシはどうしようもなく、泣きたくなった。


「これが理由」なんて、とてもひとつには絞れない。


アタシの頭も心の中も、沢山の色んな気持ちで、もうグチャグチャ……


ひとり品物を抱え込むようにして、リビングに戻ってきた新海に言った。


「新海くんに……お願いがあるんだけど……」


テーブルに品物を置くと、新海はやけに優しい眼差しで「ん?」とアタシを見る。


「泣いても……いいかな……?」


言ってるそばから、こらえ切れずに、涙が頬を伝ってこぼれた。


ちょっぴり困った様な新海の顔も、みるみる滲んで……


手のひらでで顔を覆って泣き出してしまったアタシを……


何も言わず、ふんわりと包み込む様に、新海が抱き寄せた。
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