37℃のグラビティ
ひとしきり泣いて……泣いて……


押しあてていた新海の胸から、ゆっくり顔をあげる……とそこには、今まで見た事もないくらい穏やかで、優しい新海の顔があった。


「少しは気ぃすんだ?」


アタシはそれにどこかほっとして、大きくコクンと頷くと、睫毛の先に涙を残したまま、力なくも笑って見せた。


見つめ合う目と目に……


このまま瞼を閉じたら、キスをされてしまうんじゃないかなんて、そんな不謹慎な事を思っていたら……


「泣いたら腹減ったろ? ピザ食うぞ?」


あっけらかんと言う新海に、何だか自分が恥ずかしくなる。


「ピザ、すっかり冷めちゃったね?」


「まるで誰かのせいみたいに言ってくれんじゃん?」


わざとおどけたアタシに、新海も乗っかって笑いながら……


ダイニングテーブルに向かい合って座り、二人で冷めたピザを一緒に食べた。
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