37℃のグラビティ
「最近、なんとなくだけど、お前の言った事、わかった気がする」


主語のないそんな唐突な話を新海に振られて、アタシは小首を傾げる。


「微熱の話?」


新海は疑問形で言って、ちょっと照れ臭そうに瞳を泳がせた。


北川さんとの関りで、きっと新海は何かが変わったんだ……と直感的に察知する。


胸の奥がチクリと痛んだのを誤魔化す様に、アタシは「ふふ~ん」と悪戯な眼差しを向けた。


「何だよ?」


眉間にしわをよせて、新海が訊く。


「何でもなーい」


あえておどけてみせる事で、自分の気持ちに蓋をした。


窓の外に移した視線の先、白い雪はまだ降り続けている。


アタシの中に残る微熱も……


新海への想いも全部……


雪の白が全てを覆いつくして、静かに消してくれたらいい。


太陽の光に照らされて、雪解けするみたいに、この恋を忘れていけたらいい。
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