37℃のグラビティ
「いいなぁー。新海くんと校内巡り」


昼休みにお弁当を食べながら、明日香が甘ったるい声を出した。


「なんなら、代わってあげようか?」


あっさりバトンタッチを申し出たアタシに、明日香はプルプルと首を横に振る。


「それはちょっと恥ずかしすぎるから、いい」


明日香がアタシと一緒に、新海を案内したいと思っているのはわかってたけど、それを敢えて口にはしなかった。


そこに明日香を連れて行けば、長くなりそうな気配は濃厚だったし、それならいっそ、新海の校内案内を明日香に任せて、アタシは先に帰りたい。


「ねぇねぇ、新海くんにさ、さり気なく彼女がいるかどうか、訊いてみてよ」


そんな明日香のお願いに、アタシの眉間にしわがよる。


「やだよ。そんなのまるで、アタシが知りたいみたいじゃん」


「『クラスの子が言ってたんだけど……』とか、前置きしていいから。お願い!!」


手と手を合わせて、必死にアタシに頼み込む明日香に、


「……訊けたらね」


渋々ながら、そう言った。
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