37℃のグラビティ
「……何?」


怪訝な顔で訊ねたアタシに、


「別に……」


わざとらしく、いかにも意味深に言う新海に、苛々してムカついた。


「北川さんってさ、いつもそんな感じ?」


主語なく訊かれ、思いっきり不快な表情だけをアタシが新海に向けると、


「口調とか、表情とか? それとも、よく知らない俺にだけ?」


新海は穏やかな声のトーンで、ちょっぴりからかう様に訊いた。


「愛想ないって、昔からよく言われる」


「いいじゃん。胡散臭い愛想ふりまくより全然」


アタシを否定する様な事を言うのかと思いきや、逆に肯定して小さく笑った新海の不意打ちに、不覚にもまた胸がドキリと音を立て……


「そんな事より、彼女いるの!? いないの!?」


アタシはそれを誤魔化す様に、新海を捲し立てた。


これまでの会話のやりとりから想定して、もったいぶった揚句、結局答えないんだろうと高を括っていたら、


「いるよ」


やけにアッサリ素直に返され、思わずフリーズする。


無意識にも、その端整な顔立ちに、視線が釘付けになって……そんなアタシの視線に気付いて「ん?」と新海が、こっちを向いた。
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