37℃のグラビティ
状況に思考が追いつかないまま、始まった夕食会。
円卓のおかげで、新海とは隣同士。
食事に集中できなくて、美味しいと評判の高級フレンチも、なんだか味がよくわからない。
そんなアタシの隣、手慣れたフォークとナイフ使いで、黙々と食事を進める新海。
父親同士の会話に、なんとなく耳を傾けながら、新海にはイギリスの大学に留学しているお兄さんがいる事を知った。
そして、早くにお母さんを病気で亡くしていることも……
「女の子はやっぱり華があっていいな。俺の家は男二人だから羨ましいよ」
「いやいや。女の子だっていうのに、これがまた昔っから、愛想がなくてな」
父親同士の会話に、新海が小さく吹き出して笑い、アタシはそんな新海にわざとらしい咳払いをした。
それでも新海は、声を殺しながら、肩を揺らして笑っている。
そんな新海も、お母さんを亡くしてから、家では笑わなくなったらしい。
暇さえあればマンションの屋上に出て、父親とろくに口も利かないという話をされても、新海は我関せず、どこ吹く風の様な態度を貫いていた。
円卓のおかげで、新海とは隣同士。
食事に集中できなくて、美味しいと評判の高級フレンチも、なんだか味がよくわからない。
そんなアタシの隣、手慣れたフォークとナイフ使いで、黙々と食事を進める新海。
父親同士の会話に、なんとなく耳を傾けながら、新海にはイギリスの大学に留学しているお兄さんがいる事を知った。
そして、早くにお母さんを病気で亡くしていることも……
「女の子はやっぱり華があっていいな。俺の家は男二人だから羨ましいよ」
「いやいや。女の子だっていうのに、これがまた昔っから、愛想がなくてな」
父親同士の会話に、新海が小さく吹き出して笑い、アタシはそんな新海にわざとらしい咳払いをした。
それでも新海は、声を殺しながら、肩を揺らして笑っている。
そんな新海も、お母さんを亡くしてから、家では笑わなくなったらしい。
暇さえあればマンションの屋上に出て、父親とろくに口も利かないという話をされても、新海は我関せず、どこ吹く風の様な態度を貫いていた。