37℃のグラビティ
アタシはデザートが運ばれて来たタイミングで、さり気なく席を立った。


お父さんもお母さんも、それぞれ話に夢中で、誰もそんなアタシを気にも留めない。


そのまま店の外に出て、下りエレベーターに乗り、ホテルの中庭にあるベンチに向かった。


タイミングのいい事に、そこには誰もいない。


アタシがベンチに座ろうとした途端、後ろからアタシを追い越して、新海が座るとこちらを見た。


「抜け駆けなら、ひとりよりふたりだろ?」


「別に、抜け駆けってわけじゃ……」


「あんな退屈なとこ、ずっといたら息苦しいって。だろ?」


新海に見透かされて、アタシも諦める。


「そだね」


アタシはぎこちないくらい距離を空けて、新海の隣に座った。
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