37℃のグラビティ
並んだベンチで、アタシと新海の絵図は、なんだか疲れたサラリーマンみたい!?


無意識にこぼれてしまった溜息に、新海がすかさず突っ込んで訊く。


「何? 何か悩み事でもあんの?」


答えを取り繕う間もなく、そのままを口にした。


「仮面夫婦の両親に、うんざりしてるだけ」


「俺も似たようなもん。仮面親子?」


自嘲気味に笑った新海の横顔は、どこか切なさの影を落としている。


何をどこまで突っ込んで訊いていいのかわからなくて、話題を変える事にした。


「新海って、大阪から転校して来たんだよね? 彼女は大阪の子?」


「そう。15にして、新幹線で二時間半の遠距離恋愛」


そしてまた流れる沈黙。


「じゃあ俺、先戻るわ」


「あ、うん」


歩き出した新海の背中を見送るでもなく見送って、アタシはそのまま数分時間を潰すと、レストランへ戻った。
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