37℃のグラビティ
ちょっとした秘密の場所を見つけた事で、塞ぎこんでた気持ちが、ほんの少しだけ上向きになる。


アタシは足をぶらぶらと投げ出す様に、その(へり)に腰掛け、春の夜風に(なび)くスカートも気にせず、広がる夜景に見入っていた。


突然、ドアが開く音がして、咄嗟の出来事に体勢はそのまま、ほぼ真下にある出入り口を見下ろす。


屋上へと出て来た後ろ姿が、何気なく振り返り、そんなアタシを見つけた。


一瞬、驚きで肩を小さく揺らし、怪訝な顔を次第に和らげると、口端をあげ悪戯に笑う。


アタシはその顔をとてもよく知っていた。


学校で女子と話す時は、いつもそんな風に笑ってるから。


いったい誰が付けたのか「アーヤスマイル」なんて、名前まであるくらい。
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