37℃のグラビティ
後から思えば、それはアタシの貴重な砦が、潜在意識の中、崩壊した瞬間だったのかもしれない。


「俺はきっと、柚ほど強くはなれねぇんだろうな……」


新海が何気なく呼んだ「柚」という言葉に、思わずフリーズする。


「ん? どした?」


不思議顔で新海に訊かれて、アタシはなんでもないと言う様に、首を横に振った。


新海が振られて落ち込んでいる夜に、不謹慎だと思いながら、アタシは嬉しかった。


ひとりになりたくない夜に、新海がアタシを呼び出してくれた事が……


何気ない会話の中で「柚」と呼んでくれた事が……


とても嬉しかった。
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