37℃のグラビティ
「お前も色んな俺の噂、聞いてんだろ?」


「聞いてるよ?」


ソファーを背もたれにして、並んで座るアタシ達は、お互いの顔を見ることもなく、シャンパンを飲みながら会話を進めていた。


「誰が彼女でもないし、誰の彼氏でもない」


「……そんな事だろうと思ってた」


「そんな俺に呆れて、柚は連絡してこないんだろうって、俺も思ってた」


「別に、そういうわけじゃないよ」


それはアタシの本音。


アタシはそんな新海に呆れていたわけじゃなくて、ただ自分から電話をする勇気が持てなかっただけ……


でも、そんな話を新海にするわけにもいかず、わざと軽口で話を逸らした。


「クリスマス・イヴだけど、マンションに誰かいきなり訊ねてくるとかないよね!?」


「それはない。誰もここに連れて来たことないし」


「でもさ、『一緒に過ごしたーい』って、色んな子に言われたんじゃないの?」


「誕生日とかクリスマスとか、イベントを一緒に過ごしたら、過ごした奴が勘違いすんだろ?」


「なるほどね」的な相槌を打ちながら、今ここでこうして新海と過ごしているアタシは何? と、思わず突っ込みたくなる。
< 215 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop