37℃のグラビティ
「ちなみに、今日はクリスマス・イヴで、俺の誕生日だったりもすんだよね」


飲みかけたシャンパングラスの手を止め、アタシは急いで新海を見た。


「え? そうなの!?」


驚いた顔のアタシへと悪戯に笑って頷くと、新海は逸らした視線をまた前に向ける。


「そんなダブルイベントを一緒に過ごして、アタシが勘違いでもしたらどうすんの?」


あくまでジョーク風に言って、突っ込んでみた。


「柚でもそんな勘違いすんの?」


からかったつもりが、逆に返されて、なんかおもしろくない。


「そんなにバカじゃない」


「知ってる。だからこうして、今日一緒に飲んでんじゃん?」


不貞腐れ気味に、口をへの字に曲げたアタシを、新海がまたサラリと切り返して笑った。


アタシの気持ちを知らない新海が発した言葉ながら、少なからずアタシの胸は傷ついて痛む。


アタシは新海にとって、やっぱり恋愛対象外なんだ……って。
< 216 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop