37℃のグラビティ
停滞する梅雨前線に、毎日見飽きた雨が降る。


退屈な授業に頬杖をついて、グレーに煙る窓の外を見ていた。


何があったわけじゃないし、何が変わったわけじゃない。


流れてく変わらない日常……なのに雨は、わけもなくアタシの心を憂鬱にする。


雨に煙って霞む視界が、不意に自分の心と重なって、無意識に小さな溜息がこぼれた。


校内で吉住さんを見かける度、何故かアタシの目は、その姿をさり気なく追う癖がついていて……


登下校や移動教室、偶然なのかそうじゃないのか、アタシの目に映る吉住さんはいつもひとりだった。


そんなある日の放課後、明日香と会話しながら向かった生徒玄関。


靴を履き替えて外に出ると、朝から降っていた雨は上がり、うっすらと日が差していた。


何気なく移した視線の先に、吉住さんの姿を見つける。


そんなアタシの視線の先を追って、不思議にそうに明日香が訊いた。


「柚、何見てんの?」


「あ、うん……Ⅲ組の転校生、いつもひとりでいるなぁと思って?」


「やっぱ副会長ともなると、言う事が違うね」


思ったままを口にしたアタシの肘を小突いて、明日香がおちょくって笑う。


「別にそういんじゃないってば」


「柚ってさ、クールに見えて、ホントは優しいんだよね」


明日香はそんな風に言って笑ったけど、アタシはそんな出来た人間じゃない。


実際、吉住さんが新海の彼女に似ていなければ、気にも留めなかったはずで……いつもひとりでいるとわかったところで、声をかけるわけでもないんだから。
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