37℃のグラビティ

溺れる魚

夏休み明けの教室は、朝から新海の噂話で持ち切り。


今度の新海の噂の相手というのが、校内でも有名なマドンナ的存在の倉田美紀だったから、今までなんて比にならないくらいの騒ぎぶり。


きっと新海は、吉住さんから気を逸らしたいだけ……


アタシも新海も、ホント……恋を上手く泳げない。


笑っちゃうくらい、そんなとこよく似てる。


似てるからこそ、聞いてもいない新海の気持ちが、手に取る様にわかる気がした。


他の人が聞いたなら、歪んだ恋愛観だと思うかもしれない。


不器用で素直じゃない悲劇のヒロインだと言われるかもしれない。


それでもアタシは、アタシにしか出来ない、アタシなりの想いを貫こうと心に決めた。


『そんな柚に救われてんだ……俺』


そう……アタシは新海を救わなくちゃいけない。


ううん……救えるものなら、救ってあげたい。


そう思った。
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