37℃のグラビティ
目には見えないけれど、この雲の上には澄んだ夜空が広がり、綺麗な天の川が流れているだろうことを想像して、目を閉じてみる。


どうか願いが叶いますように……


心の中で、そっと祈って、不意に浮かんだ新海の顔と……


『ハッピーバースデー』


いつかのそんな空耳まで聞こえた気がして……


アタシは目を閉じたまま、小さく吹き出して笑った。


「ハッピーバースデー。陽織」


そして再び聞こえた空耳に、ゆっくりと目を開けたアタシの髪を夏の夜風が揺らした。


揺れる前髪の隙間から、視界に入った人影に目を凝らす。


夢を見ているのかと思った。


それが彼だと分かった時、アタシの耳に届いていたノイズは消え、まるで時間が止まったみたい……


「新海……くん?」


ぎこちなく彼の名前を呼んだアタシに、新海はあの頃より少し大人びた顔立ちで、変わらない「アーヤスマイル」を向ける。
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