37℃のグラビティ
「落ち着くまでいさせてやる」


「でも……」


躊躇ったアタシに、新海は部屋の鍵を開けながら、付け足した。


「大丈夫。俺以外、誰もいねぇから」


ドアを開いて「入れば?」と、新海が目と顎で合図する。


アタシはそれに戸惑いながらも、新海の家の玄関へと入った。


「お邪魔……します……」


遠慮がちに言いながら、リビングダイニングに置かれた高級そうな家具の数々に、思わず圧倒される。


部屋の間取りも広さも、アタシの家と何ひとつ変わらないというのに、置いてある家具で、こんなにも違って見えるものなんだと、感心しながら部屋を見渡した。


「その辺テキトーに座っとけよ」


新海に言われ、リビングの真ん中にある黒革のソファーに、浅く腰かける。


突然現れた新海と、ちょっとしたカルチャーショックに、アタシの涙はいつの間にか止まっていて……


まるで別世界の様な空間をアタシはもう一度、物珍しいと言わんばかりに見渡した。
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