37℃のグラビティ
「なんだよ? やけに今日は大人しいじゃん。付き合ってた男にでも振られた?」


新海がからかって、意地悪く笑う。


いきなり図星を指されて、フリーズしてしまった。


そんな時のノーコメントは、イエス以外の何物でもない。


何も答えずにいたアタシに、新海は何も言わず……


突然、アタシを押し倒した。


咄嗟の出来事に、驚き過ぎて声も出ない。


アタシの両肩を押さえながら、新海が顔を近付ける。


それはあと数センチで、キスされそうな程の距離。


「忘れさせてやろうか?」


「アーヤスマイル」で、新海が言った。


たとえ一瞬でも、新海が寛樹を忘れさせてくれると言うのなら……


アタシは無抵抗のまま、目をゆっくり閉じる。


新海の冷たい左手が、艶めかしくアタシの頬を撫でると、クイッと顎を持ち上げ……


キスされる!!


そう思った瞬間、反射的にもっと強く目を瞑った。
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