37℃のグラビティ
「もしもし留美? 久しぶり~」


『久しぶり。陽織、元気?』


アタシとは対照的に、何か探る様な留美の声。


「元気だよ。留美が電話なんて、珍しいじゃん」


『あのね、陽織……』


留美は何か言いにくそうに、言葉を詰まらせた。


「何? どうしたの?」


『梓のことなんだけど……』


もしかしたら、寛樹の事かと思っていたアタシは、少しだけホッとする。


『……私、見たんだ。梓と寛樹が手を繋いで歩いてるとこ……』


留美の話に、一瞬、自分の耳を疑った。


「それって……いつの話?」


『ほんの1時間くらい前。学校帰りに、梓の家の近くで、偶然見かけたんだ。向こうは私に気付いてないけど……』


考えもしなかったあまりの衝撃に、言葉を失う。


『陽織?』


黙り込んでしまっていたアタシに、心配そうな留美の声がした。


『陽織、大丈夫?』


「うん。教えてくれてありがとう。アタシは大丈夫だから……」


本当は全然大丈夫なんかじゃないけど、留美に責任を感じさせたくなかった。
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