37℃のグラビティ
「言えるものなら、言いたいよ。でも……」


「距離があるから、会いたくても会えない?」


アタシがそれに頷くと、悪戯な目を輝かせて新海が言う。


「行けば? 会いに」


「他人事だと思って、簡単に言わないでよ」


「俺だったら、会いに行くって話」


「絶対ウソ」


アタシの突っ込みに、新海は肯定も否定もせず、誰かとLINEでもしているのか、スマホを打ち始めた。


アタシは怖かったんだ。


寛樹に会いに行って、現実を突き付けられるのが怖かった。


もし、その隣に梓がいたら……なんて、想像するだけでも胸が苦しくなる。


だから、距離のせいに……した?


運がいいのか、悪いのか、今日は金曜日。


本気で会いに行こうと思うなら、行って行けない事はない。


寛樹に会いに行こう。


ちゃんと現実を受け止めなければ、アタシは前に進む事が出来ないから……
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