37℃のグラビティ
結局……


一睡も出来ないまま、辿りついた街。


バスのステップを降りながら、思わず欠伸を噛みしめる。


「お前、まさか一睡もしてないとか?」


「なんか……色々考えたら、眠れなくなっちゃって」


「寝不足でぶっ倒れるとか、勘弁しろよな」


「大丈夫だって。体力だけは自信あるもん」


「てか、腹減った」


時間はまだ朝の6時過ぎ。


新海の言葉に、一番近いファミレスへと向かう事にして、少しだけ懐かしい見慣れた景色の中を歩く。


三歩先を歩く背中に、アタシが思わず吹き出すと、新海が怪訝な顔で振り返った。


「何笑ってんだよ」


「なんでここに新海くんがいるんだろう? って不意に思ったら、なんかおかしくて」


「なんで俺がここにいるか、お前が一番よく知ってんだろ」


「そういう事じゃなくてさ。なんていうか……この景色の中に、新海くんがいるのが不思議っていうか……」


「それは俺のセリフ。バーカ」


新海は涼しい顔で、トドメの一撃。


だけど。


何でも言いたい放題、言ってくれる新海との会話は、気心の知れた友達と話してるみたいで、なんだかほっとする。


おまけに近距離の新海にもだいぶ免疫が出来て、あんまり緊張しなくなった気もしないでもないし? ね。
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