37℃のグラビティ
でも、それでも。


アタシは新海を失いたくなかったんだ。


「愛」とか「恋」とか……


あくまで全く関係のない位置(ばしょ)で――


たったひとつだけ、わかっている事がある。


新海を好きになったとしても、悲しい思いをするだけだってこと。


だったら……


最初から好きになんてならなければいい。


今ならまだ、間に合うはず。


だから……


「どうしてキスなんかしたの?」なんて、訊いたりしない。


何事もなかった様に振る舞う新海が、何よりすべての答えだから。


それでも新海を失いたくないと思うアタシの感情が、いったいどこからやってくるのか、自分でもよくわからないけれど……


すべてを寂しさのせいにする事で、納得しようとするアタシがいた。
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