37℃のグラビティ
「じゃあ、アタシは? 何て呼んだらいい?」


「別に。好きに呼べば? けど……」


「けど……?」


「今のままがいいかな。俺のこと『新海くん』なんて呼ぶの陽織くらいだし。お前にそう呼ばれんの嫌いじゃない。あ、鍵ちゃんと閉めとけよ?」


最後は「アーヤスマイル」で締めくくると、アタシを残したまま、屋上から出て行った。


気の緩んだアタシの瞳から、嬉しくて切ない涙があふれ出す。


新海から受け取った鍵を握りしめて、アタシは泣いていた。


屋上のスペアキーを貸してくれたこと……


友達になってくれるって言ったこと……


それが凄く凄く嬉しくて。


『陽織』


耳に残る新海の声に、やりきれない切なさを感じた。
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