37℃のグラビティ
不意に。


屋上のドアが開く音がして、ゆっくり振り返る。


そこには新海がいて……


大きく伸びをしながら、いつものラフさ全開で、アタシの横に並んだ。


「一緒にやる?」


新海が手にしていたのは、花火セット。


いきなり現実化した思考に、心が追いつかないまま、それでもすぐに頷いた。


「まさか浴衣でいるとはね」


意地悪なトーンの突っ込みに、私もそこで我に返る。


「どーせ『馬子にも衣装』とか、言いたいんでしょ?」


「豚に真珠と猫に小判、どっちがいい?」


「豚よりは猫の方がいい」


そんなアタシの返しに、新海は珍しく、声をあげて笑った。


とても単純だって、自分でも思うけど……


新海が笑うと、アタシも楽しくなる。


そんな新海に釣られて、アタシも笑った。
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