37℃のグラビティ
散々はしゃいで……


気付けば残りは、線香花火だけになっていた。


子供の頃からそうだった。


線香花火っていつも、一番最後にやるものみたいになってて……


アタシはそんな線香花火が、大好きだったりする。


「最後に残った」というより「最後にとっておいた」っていう……


まさにデザート的感覚?


アタシは線香花火の束をほどいて、一本手に取ってしゃがむと、新海がライターで火を点けてくれた。


それは静かに大きな赤い火の玉を作って……


小さな音とともに、松葉の様な形の閃光(せんこう)を出す。


最初は弱々しいのに、だんだんと激しさを増して……


そしてまた弱々しくなって……


火の玉が落ちて消えた。


どうしてだろう……?


さっきまであんなにはしゃいでいたのに、線香花火をやり出した途端……


アタシの心は、一気に感傷モードになった。
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