この剣は守る為に
この女神国に店を構えて随分になる。

はじめこそ新参者という事で客足も伸びなかったものの、今では遠く北方の国や、女神国の王宮からも仕事の依頼がある。

王宮からの依頼という事は、タッカーは王宮御用達の鍛冶師という事だ。

それだけ信頼の置ける品質という事になる。

鍛冶師にとって、これは大変に名誉な事だった。

噂が噂を呼び、タッカーの店には多くの騎士や冒険者が訪れる。

毎日商売繁盛。

額に汗して、タッカーは剣を鍛え続ける。

…そして。

その様子を、ミーアは幸せそうに眺めていた。

もちろん、眺めているだけではない。

できうる限りの手伝いもするし、タッカーの助けになれるように手を貸す。

タッカーも、その事が嬉しかった。

自分が一人ではない事の喜び。

それを噛み締めると、自然と剣を鍛える鎚にも力がこもった。

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