花姫コネクト
lesson2. 抱きしめて下さい
 朝のチャイムが鳴って、ショートホームルームが終わった。

 サブバッグを持った彩葉(いろは)ちゃんが他の友達と私のところへ来て、早く行こうと声を(はず)ませる。

 一限目は体育だから、女子は更衣室で着替えなければならない。

 廊下を歩きながら、私を挟んだ両側から楽しそうな会話が飛び交っている。


「でね、昨日一緒に帰ることになって。自然に手繋いでくれたから、すごくドキドキしちゃった」

「彩葉ちゃんいいなぁ。私も高嶺(たかね)くんと付き合えたらなぁー」

「高嶺くんは名前の通り高嶺の花だからね。あんなイケメン相手じゃ、気が引けちゃうよ」

「たしかにね。でも好きなんだもん」


 ーー高嶺くん、かっこいいよね。
 早く、言わなきゃ。今、言わないと。

「近く行くと、なんかいい匂いするしね」

「それ分かるー! 彼女いたことあるのかな。気になるー」


 またタイミングを逃しちゃった。なかなか二人の話に入っていけない。

 まだ花が咲いたことのない私が口を挟んだところで、気持ちなんてわからないくせにって思われるから。

 彩葉ちゃんたちじゃないけど、陰で女子が話してるところを聞いたことがある。

 だから、何か違う反応でもしたら、たぶん心の中では思われる。


「華ちゃん、隣で羨ましいなぁ」


 あははと笑い返すことしか出来なくて、頬が強張(こわば)っていく。

 恋の話になると、口がくっ付いたみたいに動かなくなるんだ。まるで呪いにかかっているように。
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