花姫コネクト
***

「これが三兄弟で、こっちは響のお土産! 響とメルはお揃いなのー! 可愛いでしょう?」

 リズム良く目の前に置かれたキーホルダー。サヤの中から枝豆のつぶらな顔がのぞいている。

「……ありがとう……ございます」

 とりあえずお礼を言うけど、いまいち状況が掴めていない。

 突然のグループココアで、姫先輩から集合をかけられたのは昨夜のこと。

 土曜日の昼過ぎ、乙谷さんのカフェへ来てみたら河合さんもいた。少し遅くなったけどと、修学旅行のお土産を配っている。

「三兄弟って、なにかな? それに、一応私も修学旅行行ってるけど。もらっていいのかな」

 戸惑いながら乙谷さんが尋ねると、河合さんが「あっ、ほんとね」と言ってパンッと手を鳴らした。

「これ見つけた時、あなたたち三人の顔が浮かんだのよ。一番上の悠晴くんと真ん中の(おと)ちゃん。そして末っ子の王子ちゃん! どう? 完璧でしょう?」

 鼻高々な表情を浮かべる河合さんに、思わず吹き出してしまう。

「なにがおかしいのよ?」
「いや、おかしいだろ。乙谷は真ん中じゃなくて一番上だ」
「姫川先輩、ツッコむところそこですか」
「ズレてるよねー!」
「王子に言われたくねーわ」

 和やかな空気が流れている。みんなが笑って、楽しそうにしているのが嬉しい。

 河合さんには嫌われていると思っていたから、お土産を買って来てくれたことに驚いて、胸が温かくなった。

 ねえ、と席を詰められて、隣にいた河合さんの肩が迫ってくる。耳の後ろへ顔が近付けられて、どくんと心音が鳴った。

「ずっと気になってたんだけど。王子ちゃんって、響のなに?」

 にらむような鋭い瞳ではなく、少し寂しそうに映る。どうしてだろう。呼吸が苦しい。

「なにって……、ただの、後輩です」

 口に出して、もっと痛みは広がった。親しいつもりではいるけど、それ以上の関係にないことは事実。

 みんな話に夢中で、私たちの方は見ていない。だからなのか、河合さんは声量を気にしつつ続けて言う。

「……よかった。私には響しかいないの。だから、絶対好きにならないでね」

 真っ直ぐな眼差しは、冗談なんかじゃないことを知らしめている。

 固まったまま、うなずくことも、返事をすることも出来なかった。
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