花姫コネクト
 それぞれ家族が迎えに来てくれて、少し遅れると連絡の来た私と、電車で来ていた姫先輩が残った。

 ゲートの出口近くのベンチに座って、お母さんを待つ。

「暗くなっちゃうし、乗ってきます? 方向一緒ですし」
「寄るとこあるし、王子の親が来たら電車で帰る」
「……そうですか」

 電車だと一時間以上はかかるし、途中で乗り換えなくてはならない。

 一度調べたから、なんとなく分かる。あまり利用したことのない私には無理だと、すぐ諦めたから。

「……観覧車、どうだった?」

 前を向いたままの姫先輩が、ぽつりと落とす。

「観覧車ですか? 話してたからあまり景色は見てないけど、空がきれい……」
「なに話してた?」

 ゆっくり隣を向くと、流れるような視線とぶつかった。胸の奥がざわついて、ドキドキしている。

「なにって……」

 姫先輩へ向ける笑顔が好きだと、告白された。そんな自惚れたこと、信じてもらえないだろうな。

 だって、高嶺くんは女子からの人気が抜群に高い。私にはもったいない王子さまみたいな人だから。

「ああー、別に気にしてるわけじゃねーけど」

 顔を伏せながら、そうだこれと小さな袋を渡された。
 なんだろうと開けてみると、中身は可愛らしいキーホルダー。

「……これって」
「さっき、たまたま見つけた。なんか王子っぽいだろ。ちんちくりんな顔とか……、その花とか」

 白い花の上に座る女の子は、花姫そのものだった。心なしか、口の色が今つけているリップと似ている。

 どうしよう、嬉しくて涙が出そう。

「ありがとうございます。宝物にしますね」

 大げさな奴だなと飽きられたけど、関係ない。自分の気持ちに、もっと正直でありたい。

 やっぱり私には、不器用で太陽より暗闇が苦手なモグラさんがしっくり来る。

 もう心に嘘をつくのはやめよう。素直になる勇気を、高嶺くんが教えてくれたから。

 別れ際に手を振りながら、耳元の白い花が、キーホルダーと同じで弾むように揺れていた。
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