花姫コネクト

「あっ、月がきれいですねゲームなんてどうかな?」
「それなんですか?」

 机にあったキャンドルを布団の枕元に置いて、乙谷さんがライトを付ける。可愛らしいオレンジの光がぽわんと光った。

「例えば、夏目漱石の〝今夜は月が綺麗ですね〟には、〝あなたが好きです〟って言葉が秘められているの。こんな感じで文章を考えて、隣の人がその意味を答えるのはどう?」

「……難易度(なんいど)高いですね」

 面白そうだけど、文学のセンスがない私にはハードルが高そうなゲーム。

「新聞部で物語も作ってるし、良いと思ったんだけどな」

 残念そうにする乙谷さん。案を出してくれたのに、なんだか申し訳なくなって。

「やりましょう、やりましょう!」

 思わず勢いで言ってしまった。恥をさらすことになりそうだけど、せっかくのお泊まり会だからみんなで楽しみたい。

 隣で寝転ぶ河合さんが、こちらに人差し指を向けて。

「分からなかった人には罰ゲームあるから。真剣にね!」と言って、ふふふと含みを持たせた笑みを浮かべる。

 ええー、と不満の声を上げる私たちになどお構いなしで、電気が消された。
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