花姫コネクト
 学校から少し歩いて、次の取材場所である弓道場を訪れると道着姿の高嶺くんがいた。

 和の振る舞いがとても似合っていて、思わず見惚れそうになる。

 背筋が伸びた姿勢、弓を引く眼差し。女子たちが騒ぐのも(うなず)ける。

 ほわんと穏やかな気持ちになっているところへ、空気をぶち壊す声が降ってきた。


「王子、鼻の下伸びてんぞ」


 不意打ちに向けられたカメラがパシャッと光る。


「せめて目がハートにして下さい。一応、女子なんですが」

「そーだっけ」


 いつもの調子に戻ったと思ったら、すぐこれだもの。少しくらいシュンとさせたところで、きっと神様は怒らない。

 頬を膨らませていると、矢を打ち終えた高嶺くんが近付いて来た。


「大路さん」

 周りに星を散りばめたようなキラキラした笑顔。さすがモテる人は違う。


「お疲れさま。新聞部の取材、今日だったんだね」

「高嶺くんもお疲れさま。なんか上手く言えないけど、すごくカッコ良かったよ!」


 一年生の時は文章を担当していたから、初めて矢を()る姿を見た。

 意外と弓って大きいんだなと思っていたら、高嶺くんの反応がおかしいことに気付いた。

 心なしか頬が、それに耳まで赤みを()びている。


「……ありがとう」

 視線を合わせてくれない。

 もしかして、照れてる?

 高嶺くんって、カッコいいと褒められ慣れていると思っていた。
< 12 / 133 >

この作品をシェア

pagetop